標的型メール訓練サービスの契約更新の前に見直すこと:使った量・教材・報告・手間・課金方式
更新日:2026年9月27日 作成:メール訓練比較ラボ 編集部(調査の方法と編集の方針)

なぜ更新の前に見直しが必要なのか
標的型メール訓練のサービスは、年単位の契約になっていることがあります。導入したときは比べて選んでいても、1〜2年たつと、社員の人数、訓練の回数、担当者、使っているメールの環境が変わっていることがあります。
それでも、更新の時期は日々の仕事にまぎれて、「前年と同じ条件で自動更新」になることがあります。見直しの機会を逃す理由は、主に次のとおりです。
- 更新日を把握していない:契約書の自動更新の条項や、解約の申し出の期限を確かめていない
- 使った量を数えていない:何回、何通送ったか、教材を何人が受けたかを集計していない
- 比べる基準がない:今のサービスに不満はあっても、何と比べればよいかわからない
IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、意識向上の教育について、実施記録を保管し、理解度と受講状況の評価結果を踏まえて改善することを勧めています。また、インシデント対応の教育・訓練についても、実施状況を記録・保管し、定期的に内容を見直すよう勧めています。契約の更新は、この「見直し」を行うのにちょうどよい区切りです。
放っておくと困ること
- 使っていない分の費用を払い続ける:契約した回数や人数の枠を使い切っていないのに、同じ条件で更新してしまう
- 足りない分に気づかない:人数が増えたのに枠が足りず、一部の社員が訓練の対象から外れている
- 目的とずれたままになる:開封率だけを見る仕組みのまま続け、報告の練習ができていない
- 急な乗り換えに追われる:提供元の事業の見直しなどでサービスが終わることもあります。実際の事例と乗り換えの確認点は「訓練サービスの提供終了で乗り換えるときの選び方」で解説しています
対策とサービスの選び方
1. 契約の条件を確かめる
更新日のおよそ3か月前には、契約書と見積書を出して、次の点を確かめます。
- 契約の期間と、自動更新の有無
- 解約や条件変更を申し出る期限
- 契約に含まれる回数・通数・人数の枠と、超えたときの扱い
- 教材、報告書づくり、サポートなど、料金に含まれているもの
2. 使った量を数える
この1年で、実際にどれだけ使ったかを表にします。
| 項目 | 確かめること |
|---|---|
| 訓練の回数 | 予定していた回数を実施できたか。できなかった理由は何か |
| 送った通数 | 回数×対象者の数。契約の枠と比べて、余っていないか、足りていないか |
| 対象者の数 | 入社・退職・異動で、名簿の人数がどれだけ変わったか |
| 教材の利用 | 訓練後の教材を何人が受けたか。受けていない人が多くないか |
| 報告の件数 | 訓練メールや実際の不審メールの報告が、どれだけ集まったか |
枠が大きく余っているなら条件を小さくする、足りないなら枠を広げるか課金方式を変える、といった判断の材料になります。
3. 目的に合っているかを確かめる
IPAは、訓練は実施目的を明確にして内容を決めるよう呼びかけています。開封率を下げることだけでなく、受信者が適切に対処できるか、体制が機能するかを確かめることも目的になりうるとしています。また、IPAの「企業組織を狙う攻撃メールの手口とその対策」(2026年8月)は、不審メール受信の報告を手順に従って行うところまでを訓練で演習するよう勧めています。
今のサービスで、次のことができているかを見直しましょう。
- 報告した人を記録・集計できているか。報告率を毎回見ているか
- 報告ボタンなど、社員が報告しやすい仕組みを使えているか
- 自社で起きた事故や、最近の攻撃の型に合わせた文面を用意できているか
- 部署ごと、前回ごとに結果を比べられる形で残っているか
報告の考え方は「報告率とは」、報告の仕組みに注目した選び方は「報告できる組織まで作りたいなら」で確認できます。
4. 担当者の手間を数える
料金だけでなく、担当者が1回の訓練にかけた時間も費用として考えます。
- 名簿の登録・更新、配信の設定、テスト配信
- 社員からの問い合わせへの対応
- 結果の集計と、経営層への報告書づくり
- 教材の案内と、受けていない人への連絡
手間が大きい作業がはっきりすれば、「配信や集計を代わりに行う配信代行型にする」「自動集計や報告書の出力ができるツール型に変える」といった選び方の軸になります。担当者が少ない場合の工夫は「ひとり情シスでも続けられる標的型メール訓練の進め方」を参考にしてください。
5. 課金方式が使い方に合っているかを確かめる
訓練サービスの料金は、大きく次の3つの考え方に分かれます。
- 通数課金:送った訓練メールの通数で決まる。回数が少ない会社では無駄が出にくい
- ユーザー課金:対象者の人数で決まる。回数を増やしても料金が変わりにくい
- 定額:年間などの期間ごとに、決まった金額になる。人数や回数が多い場合に比べやすい
同じ人数でも、年に何回実施するかで、有利な方式は変わります。手順2で数えた回数と人数をもとに、課金方式別の費用の試算で、今の方式と他の方式を比べてみてください。各サービスの料金体系は比較表で確認できます。
6. 乗り換えるなら、データと設定を引き継ぐ
乗り換えを決めた場合は、今の契約が終わる前に次のことを済ませます。
- 過去の結果(回ごとの集計、部署ごとの数字)を、ファイルで書き出しておく
- メールの許可リストなど、訓練メールを届けるための設定を、新しいサービス用に変える
- 新旧の契約期間が重なる期間を作り、テスト配信をしてから切り替える
こんな場合は早めに検討
- 契約した回数や通数の枠が、毎年大きく余っている
- 社員の人数が増えて、対象から外れている人がいる
- 訓練の結果で、報告した人の数がわからない
- 担当者が替わり、今のサービスの使い方を知る人がいない
- 更新日や解約の申し出の期限を、誰も把握していない
よくある疑問
Q. 満足していれば、見直さずに更新してもよいですか?
A. 満足している場合でも、使った量と課金方式が合っているかは確かめておくのがおすすめです。条件を少し変えるだけで、無駄が減ることがあります。
Q. 乗り換えると、過去の結果と比べられなくなりませんか?
A. 過去の結果を書き出しておけば、自社の中での比較は続けられます。新しいサービスの最初の回は、文面の型や予告の有無を前回とそろえると、比べやすくなります。
Q. 教材を受けていない人が多い場合は、どうすればよいですか?
A. 教材が長すぎる、案内が埋もれている、受けたかどうかを誰も確かめていない、といった理由が考えられます。短い教材を選べるか、受けていない人に自動で案内を送れるかも、見直しのときの確認点にしましょう。教育の進め方は「種明かしと訓練後の教育」で解説しています。
Q. 見直しの結果は、誰に説明すればよいですか?
A. 予算を決める経営層や上司に、「使った量」「目的に合っているか」「手間」「費用」の4点を1枚にまとめて説明すると、判断してもらいやすくなります。
まとめ
- 契約の更新は、訓練の記録を見直して改善する、ちょうどよい区切りです
- 更新日の前に、契約の条件、使った回数・通数・人数、教材の利用状況を数えましょう
- 報告を記録できているか、担当者の手間はどれくらいかも、料金と同じように比べます
- 課金方式が回数と人数に合っているかを試算し、乗り換えるなら結果のデータと設定を引き継ぎましょう
参考にした情報
- 中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版(IPA)
- 企業組織を狙う攻撃メールの手口とその対策(PDF)(IPA セキュリティセンター、2026年8月3日)
- 組織における標的型攻撃メール訓練は実施目的を明確に(IPA、2017年7月31日)
記事の内容は2026年9月27日時点の情報です。サービスの料金・機能は比較表で確認できます。