標的型攻撃メールとは:ばらまき型との違いと見分け方
更新日:2026年9月27日 作成:メール訓練比較ラボ 編集部(調査の方法と編集の方針)

標的型攻撃メールとは
標的型攻撃メールとは、特定の組織や人を狙って送られる攻撃メールのことです。添付ファイルや本文のリンク先にマルウェア(不正なプログラム)を仕込み、開いたパソコンを感染させます。
IPA(情報処理推進機構)は、標的型攻撃を「特定の組織(民間企業、官公庁、団体等)に対して行われるサイバー諜報活動」と説明しています。主な目的は、機密情報を盗み出すことです(IPA「企業組織を狙う攻撃メールの手口とその対策」2026年8月3日)。
標的型攻撃メールは、そのための「入口」として使われる手口の一つです。一通のメールが、組織の中への侵入のきっかけになります。
「10大脅威」での位置づけ
IPAは毎年、前年に起きた事故や攻撃をもとに「情報セキュリティ10大脅威」を公表しています。最新版の「2026」の組織編では、「機密情報を狙った標的型攻撃」が5位に選ばれました。初めて選ばれたのは2016年で、2026年まで11年連続の選出です(IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」)。
2026年の組織編の上位は、次のとおりです。
| 順位 | 脅威 |
|---|---|
| 1位 | ランサム攻撃による被害 |
| 2位 | サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 |
| 3位 | AIの利用をめぐるサイバーリスク |
| 4位 | システムの脆弱性を悪用した攻撃 |
| 5位 | 機密情報を狙った標的型攻撃 |
出典:IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」(組織編の1〜5位を抜粋)
10位には「ビジネスメール詐欺」も入っています。メールを入口にした攻撃は、順位の上下はあっても、毎年のように並び続けていることがわかります。
ばらまき型との違い
攻撃メールは、大きく「標的型」と「ばらまき型」に分けて説明されることがあります。IPAの資料では、次のように整理されています。
- ばらまき型:同じ文面のメールを、不特定多数に送る。フィッシングメールの多くはこの型
- 標的型:狙う人をあらかじめ決め、その人の業務内容を調べたうえで、業務に関係する内容のメールを送る
(IPA「企業組織を狙う攻撃メールの手口とその対策」)
違いを表にまとめると、次のようになります。
| 比べる点 | ばらまき型 | 標的型 |
|---|---|---|
| 送る相手 | 不特定多数 | 特定の組織・人 |
| 文面 | 同じ文面を大量に送る | 相手の業務に合わせて作る |
| 主なねらい | パスワードやお金をだまし取る、感染を広げる | 機密情報を盗む、組織の中に入り込む |
| 気づきやすさ | 同じメールが多くの人に届くため、話題になりやすい | 少数にしか届かず、業務メールに紛れやすい |
標的型が厄介なのは、知らない相手からのメールでも、開かざるを得ない内容になっている点です。IPAは、受信者が開かざるを得ない、または興味をそそる内容が書かれていると説明しています。
また、10大脅威2026の解説書では、メールを使った標的型攻撃について、件名・本文・添付ファイル名が業務や取引に関係する内容に偽装され、実在する組織の差出人名が使われる場合もある、と説明されています(IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編]」)。
ばらまき型でも「組織をかたる」ものがある
ばらまき型の中には、実在する会社の社長や取引先、公的機関になりすますものもあります。特定の会社を狙っていなくても、差出人の名前だけを見ると本物に見えることがあります。IPAの資料でも、組織をかたる「ばらまき型」のなりすましメールが、標的型とは別の手口として取り上げられています。
つまり、「知っている名前だから安全」とは言えない点は、どちらの型にも共通しています。
見分けるときの着眼点
標的型攻撃メールは、見た目だけで確実に見分けることは難しいメールです。そのうえで、公的な資料が挙げている着眼点を、受け取った人の立場で整理します。
1. 急がせる・開かせようとする
IPAは、不審なメールが届いたときに、特に次の点に注意するよう呼びかけています(IPA「企業組織を狙う攻撃メールの手口とその対策」)。
- 緊急性を強調して、URLリンクのクリックや添付ファイルの開封を求めるメール
- 取引先などを装い、緊急性をあおるメール
「至急」「本日中」「確認しないと不利益がある」といった言葉は、落ち着いて考える時間を奪うための典型的な要素です。
2. 送信元を確かめる
同じ資料では、送信元のドメイン名(メールアドレスの@より後ろ)が偽装されていないかを確認するよう求めています。同じ資料のビジネスメール詐欺の説明では、正規のドメインとつづりが少しだけ違うドメインを攻撃者が事前に取得する例も紹介されています。表示名だけでなく、アドレスそのものを見ることが大切です。
3. 添付ファイルの種類と見た目
JPCERT/CC(JPCERTコーディネーションセンター)は、標的型メールで使われた添付ファイルについて、次の2種類を報告しています(JPCERT/CC「標的型メール攻撃に関する注意喚起」2011年)。
- 文書ファイルの形をとり、ソフトの既知の弱点(脆弱性)を悪用するもの
- 実行ファイルでありながら、アイコンを文書に見せかけ、拡張子(ファイル名の末尾)を見誤らせる細工をしたもの
同じ注意喚起では、文書形式のものの多くは既知の脆弱性を使っており、更新プログラムが適用されていれば感染を防げた、とも述べています。見分ける力と、ソフトを最新にしておくことの両方が必要です。
4. 少しでも迷ったら、メール以外で確かめる
IPAは、少しでも不審に感じたら、メール以外の方法で相手に直接確認するよう勧めています。返信で確かめると、攻撃者本人に届いてしまうおそれがあるためです。電話番号も、メールに書かれたものではなく、名刺や社内の名簿など、もともと知っている連絡先を使います。
届いたときの対応と、組織としての備え
受け取った人がすること
IPAの資料をもとに、受け取った人の基本の動きをまとめます。
- URLリンクをクリックしない。添付ファイルを開かない
- 社内で決められた窓口(システム部門など)に報告する
- 誤って開いた場合は、パソコンをネットワークから切り離す
- 偽のサイトにパスワードを入力してしまった場合は、すぐに変更する。同じパスワードを他で使っていれば、そちらも変更する
10大脅威2026の解説書でも、従業員が行う対策として、安易に添付ファイルを開いたりリンクをクリックしたりしないことが挙げられています。
組織として決めておくこと
IPAの資料は、管理者側で次のことを決めておくよう勧めています。
- 不審なメールを受け取ったときの報告先と報告の書式(受信日時、送信元、リンクや添付の有無、クリックや開封をしたかどうか、など)
- 開いてしまったときに本人がすべき初動
- 報告を受けた管理者の対応手順(状況の聞き取り、全社への注意喚起、メールのフィルタ設定の追加など)
同じ資料では、フィルタをすり抜けて届いたメールを社員が報告することも「検知の一環」と位置づけています。そのために、教育・研修と標的型メール訓練を定期的に行い、報告を手順どおりに行うところまで演習することを求めています。
訓練の目的や進め方は、「標的型メール訓練とは」と「標的型メール訓練のやり方」で解説しています。訓練サービスの種類(ツール型・配信代行型など)の違いは、比較表で確認できます。
まとめ
- 標的型攻撃メールは、特定の組織や人を狙い、相手の業務を調べたうえで送られる攻撃メール。主な目的は機密情報を盗むこと
- IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」組織編では「機密情報を狙った標的型攻撃」が5位。2016年から11年連続で選ばれている
- ばらまき型は同じ文面を不特定多数に送る。標的型は業務に合わせた文面で、業務メールに紛れやすい
- 見分ける着眼点は「急がせる内容」「送信元のドメイン」「添付ファイルの種類と見た目」。迷ったらメール以外の方法で確かめる
- 見た目だけで防ぎきることは難しいため、報告先と手順を決め、訓練で報告まで練習しておくことが大切
参考にした情報
- 情報セキュリティ10大脅威 2026(IPA)
- 情報セキュリティ10大脅威 2026 解説書[組織編](IPA、2026年3月)
- 企業組織を狙うメールを悪用した攻撃の手口とその対策(IPA、2026年8月3日)
- 企業組織を狙う攻撃メールの手口とその対策(PDF)(IPA セキュリティセンター、2026年8月3日)
- 標的型メール攻撃に関する注意喚起(JPCERT/CC、2011年10月28日)
記事の内容は2026年9月27日時点の情報です。サービスの料金・機能は比較表で確認できます。